Office Relocation Guide オフィス移転トータルガイド 株式会社MMG
オフィスビルの外観

はじめに

企業にとって一大プロジェクトとなるオフィス移転。
その実施に際しては社内に核となる担当者を置き、その人を中心に
チームを編成してプロジェクトを進めることが必要となります。
本ガイドでは、移転プロジェクトの流れに沿って
それぞれの業務について詳しくご説明していきます。

移転目的の具体例

コスト見直し 人員の増減による拡大・縮小 企業イメージの向上 立地改善 入居ビルの建替 入居ビルの経年劣化 業態の変化 拠点統合 新規拠点開設

~移転の目的を明確にし、その目的に合わせた物件選定条件を策定する~

移転の目的が曖昧になると物件選定時の判断基準がぶれ、本来の目的を達成できなくなります。
新しいオフィスに求める必須条件や優先順位を具体的に決めておきましょう。

お客様への提案書

1.入居中オフィスの契約内容確認

まずは現在入居中オフィスで交わしている賃貸借契約書で、退去に関して重要なポイントとなる以下の4点を確認します。

  • 解約予告期間※1
  • 預託金の返還
  • 原状回復の要・不要
  • 中途解約に関する特約条
    項の有無(違約金の発生)※2
  • ※1解約予告期間は、契約期間中に退去した場合でも明け渡しまでの賃料等が必要となるため注意が必要です。
  • ※2中途解約については契約内容により様々ですが、違約金が発生することがあるので、きちんと確認しておきましょう。

2.移転時期の検討・移転エリアの選定

連休期間や繁忙期などを考慮した上でおおよその開設希望時期を定め、これを指標として移転プロジェクトを進めます。
業務だけでなく従業員の通勤における利便性と交通費も考慮し、トータルでのコストを勘案して候補となるエリアを絞り込みましょう。

3.新しいオフィスの広さを決める

まず今使っているオフィスの面積を正しく把握し、デッドスペースがないかなど、稼働率を確認します。その上で従業員数、役員室や応接室、受付、会議室の要・不要、棚や備品の量などを勘案しながら、新しいオフィスに必要な面積を割り出しましょう。

必要面積の算出方法

「約2〜3坪(約6.61㎡〜9.92㎡)/1人」が目安となります。
役員室・応接室・会議室・受付スペースなどが必要な場合は、
人数で算出した面積にプラスします。

1人あたり約2~3坪/必要面積の算出方法

4.初期費用を含めた予算を組む

賃料(共益費含む)だけでなく、入居に際しては敷金や礼金などが必要なので、あらかじめ移転にかける予算を確認しておきましょう
また、内装工事費・引越費用などのイニシャルコストも考慮しておく必要があります。

想定される主な費用

移転時 ランニングコスト
敷金/保証金 賃料(共益費込)
礼金 水道・光熱費
賃料(共益費込)当初1~2ヶ月分 清掃費・警備料
損害保険 駐車場・駐輪場使用料
保証会社(初回保証委託料)※加入の場合のみ 損害保険(更新料)
駐車場敷金/保証金※契約の場合のみ
駐車場賃料※契約の場合のみ
仲介手数料
内装工事費用(電話・ネット工事含む)
引越費用
鍵交換代・ネームプレート代
社内印刷物・挨拶状

〜STEP1で策定した条件をもとに仲介会社に相談し、情報を収集する〜

具体的な移転目的や要望する条件を仲介会社の担当者に伝え、物件情報の提供を受けます。
オフィスビルは業種や用途の制限が設けられている場合が多いので、自社の業種や使用用途を仲介会社に正確に伝えておきましょう。
提案された中で気になった物件は可能な限り内覧(内見)をして、実際のビルの雰囲気や設備、周辺環境をチェックします。
候補となる物件が絞り込めたら、貸主との賃貸借条件交渉を仲介会社担当者に依頼し、詳細な契約内容を詰めていきます。

1.内覧(内見)について

平均して1物件当たり15〜30分を要します。
多数の物件を一度に見てしまうとそれぞれの物件の印象が薄れ、選定の際に迷う原因となります。
そのため1日の内覧件数は3〜5件程度に留めましょう。
内覧希望件数が多い場合は複数日に分けて内覧されることをおすすめします。

1物件当たり15~30分 1日の内覧件数は3~5件程度に留める

2.コストについて

最初に何ヶ月分の賃料・共益費が必要か、敷金/保証金・礼金などの初期にかかる費用を確認します。
その際、賃料改定時の取り決めや、退去時に原状回復が必要かなど、細かいところまで確認しておきましょう。
契約内容によって駐車場・駐輪場の使用料、ビルによっては警備料などの月々の諸経費が別途必要な場合もあります。
また、契約開始日から賃料起算日までの期間(フリーレント期間※)についても確認しましょう。

フリーレント期間とは賃料が免除される期間のことです(共益費等は適用外)。ただし、ビルによって設定されていなかったり、諸経費が必要な場合があったりなど、様々な形態があります。

3.契約形態

賃貸借契約には大別して2種類あります。

  • 「普通借家契約」

    契約期間満了時、期限内に解約の意思表示がない限り同一条件で自動更新。

    更新料が必要なケースもあり。

  • 「定期借家契約」

    原則として契約更新なし。

    双方合意の上で新たな契約(再契約)を締結することができる場合もあり。

4.初期費用を含めた予算を組む

ビルによって契約面積と実効面積(実際にオフィスとして使用できる面積)が異なる場合があるので、物件資料を確認する際には注意が必要です。
グロス契約の場合は契約面積の中に廊下や給湯室、トイレなどの共用スペース面積が含まれるため、オフィスとして使用できる面積は表記されているより小さくなります。実際に必要な面積が正しく確保できるかどうかの確認をしましょう。

ネット契約:契約面積=実効面積

グロス契約:契約面積=実効面積+共用部面積

これらの内容を勘案して候補物件を絞り込み、
移転候補物件を選定しましょう。

〜候補物件の貸主に入居申込書・必要書類を提出し、入居審査を受ける〜

STEP2で選定した物件に入居申込みの意思を伝え、申込みに必要な書類を揃えて提出します。

入居申込書の提出

指定される書式に企業情報と希望賃貸借条件を記入し、会社パンフレットなども添えて提出します。
貸主はこの企業情報を基にテナントの入居審査を行い、入居の可否を決定します。
法人契約の場合、会社代表者が連帯保証人になるケースが多く、
入居審査の結果、2人目の連帯保証人が必要となる場合もあるので注意が必要です。

お客様から必要書類の提出

申込み時に必要な書類

  • 入居申込書
  • 会社概要書(パンフレットなど)
  • 履歴事項全部証明書
  • 決算報告書写し(直近2〜3期分)
  • 連帯保証人運転免許証コピー

〜貸主による入居審査を経て、賃貸借契約を締結する〜

貸主から入居の承諾が得られたら、いよいよ賃貸借契約締結です。

賃貸借契約を締結する

1.契約書の内容を精査する

記載されている全ての条項について精査し、必要に応じてリーガルチェックを行います。
ビルの利用可能時間や空調稼働時間制限、セキュリティ上のルールなど、業務に不都合な点がないかも確認しておきましょう。
「館内細則」を作成しているビルも多いので、事前に入手して目を通しておくことをおすすめします。
少しでも疑問に感じる点があれば仲介会社の担当者に相談し、貸主との調整を依頼しましょう。
押印する前に納得のいくまで調整を繰り返すことが大切です。

2.内装工事計画を立てる

新しいオフィスの図面を確認しながら、具体的なレイアウトプランを立てていきます。レイアウトによっては照明や空調の移設工事が必要になるケースがありますが、工事については必ず貸主の事前承諾が必要です。また、電気工事・内装工事の業者を貸主から指定される場合もあるので、指定業者の有無も確認しましょう。作業可能な日程や時間帯もビルによって様々なので、入念なチェックが必要です。

  • A工事
    オーナー負担で施工される工事
  • B工事
    テナント負担、オーナー指定業者によって施工される工事
  • C工事
    テナント負担、テナント選定業者によって施工される工事

消防法に抵触しないかといった確認に1〜2週間を要する場合もあるため、
内装工事にかかる時間などのスケジュール感を把握し、無理・無駄なく効率的に
進められるように進捗管理を徹底しましょう。

オフィスの内装

3.電話・インターネット業者の確認

貸主からの指定がない場合は電話・インターネットの手配を行います。内装工事業者に内装と一緒に手配することも可能です。
工事見積・仕様書をよく確認して、手配漏れがないように注意してください。

4.重要事項説明と契約書の提出

重要事項説明とは、契約締結前に仲介会社(宅建業者)に勤務する宅地建物取引士から建物、設備、契約内容、契約期間、契約の更新・解除、法令による制限について記載された書面(重要事項説明書)の説明を受け、この書面の交付を受けることを言います。
その後仲介会社から渡される契約書類一式に署名・捺印(印鑑証明と一致する実印)の上、必要書類と一緒に貸主に提出し、貸主が押印後、契約締結となります。
契約には様々な書類が必要なので、早めに揃えておきましょう。

主な必要書類一覧

法人必要書類 連帯保証人必要書類 駐車場
履歴事項全部証明書(2〜3ヶ月以内のもの) 住民票(2〜3ヶ月以内のもの) 駐車場申込書
法人印鑑証明書(2〜3ヶ月以内のもの) 印鑑証明書(2〜3ヶ月以内のもの) 車検証写し(自動車検査済証)
決算報告書写し(直近2〜3期分) 身分証明書(免許証or保険証の写し) 運転免許証写し(両面)
入居申込書 顔写真(カラーコピーで鮮明なもの)
火災保険申込書 所得証明書(または源泉徴収票)
賃貸保証会社申込書 在職証明書
重要事項説明書写し

5.預託金等の入金

契約内容に従い、指定される口座に預託金(敷金/保証金)の預け入れ、賃料等の入金を行います。
通常、振込手数料は借主負担となります。

6.引渡し

預託金等(決済金)入金の確認後、貸主・仲介会社と日時の調整を行い、鍵の引渡しやビル共用部の使用方法、館内細則等の説明を受けます。

鍵を持ったキャラクター

これで移転プランニングから新しいオフィスの契約までの流れは完了です。
この一連の流れと並行して、退去するビルの手続きも進めておきましょう。

退去に向けての準備

1.契約期間と解約予告期間の確認

契約期間中の解約に関しては違約金が発生する特約条項が設けられている場合が多いため、契約書できちんと確認しましょう。解約予告は通常3ヶ月〜6ヶ月前までに書面で退去を通知することが契約書に記載されており、即時解約の場合は予告期間分の賃料等の違約金が発生するのが一般的です。

解約予告は通常3ヶ月~6ヶ月前に

2.預託金(敷金/保証金)の確認

契約書で預託金の返還額・割合や返還時期の確認をしましょう。償却率(返還額)は入居年数によって変動する場合があるので、念入りな確認が必要です。

3. 原状回復費の確認

オフィスの場合、退去時には基本的に全て入居前の状態に戻して返還することが契約に含まれています。この場合借主は入居時に行った内装の変更なども全て賃借開始当時の状態にまで原状回復する義務を負っていますので、工事の範囲やかかる期間についてきちんと把握する責任があります。また、原状回復工事については、ビルの仕様やイメージの統一を図るために貸主指定の工事業者に発注するように決められていることが多いので、貸主への確認が必要です。

退去のタイムスケジュール

3~6ヶ月前 解約予告提出 0ヶ月 新オフィス入居 ~2ヶ月後 ・鍵の返却 ・原状回復工事 ・預託金の返還 ・旧オフィスの契約終了

移転前後の手続き

移転時には官公庁への届け出や手続き、取引先への挨拶状、会社案内や名刺といった印刷物、
ホームページの住所変更など、多岐に渡る手続きが必要になります。漏れのないよう、きちんと確認しながら進めましょう。

関係官庁への届け出

届出先 手続内容 窓口 届け出期限
法務局(登記所)
本店移転登記申請

管轄する法務局が同一の時:手数料3万円
管轄する法務局が変わる時:手数料6万円

支店がある場合は支店所在地の管轄局においても手続きが必要

移転前の管轄法務局 移転後2週間以内
支店移転登記申請 移転後3週間以内
税務署 異動届出書 移転前・移転後双方の
管轄税務署
移転後速やかに
給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出 移転後1ヶ月以内
都道府県税事務所 事業開始等申告書 移転前・移転後双方の
税務事務所
事業開始後10日以内
年金事務所 健康保険・厚生年金保険適用事業所所在地・
名称変更(訂正)届
移転前の管轄年金事務所 移転後5日以内
労働基準監督署 労働保険名称、所在地変更届 移転後の
管轄労働基準監督署
移転後10日以内
労働保険関係成立届
労働保険保険料申告書
公共職業安定所 雇用保険事業主事業所各種変更届 移転後の管轄職業安定所 移転後10日以内
消防署 防火・防災管理者選任(解任)届出 移転後の
所轄消防署 予防課
移転の7日前までに
消防計画作成(変更)届出書 移転の7日前までに

防火対象物工事等計画届出書

天井まで達するパーテーションなどの内装工事を行う際に必要

造作工事開始の
7日前までに
防火対象物使用開始届出書 移転の7日前までに
警察署
(社有車有りの場合)
車庫証明 移転後の所轄警察署 移転後速やかに
郵便局 転居届 移転前の受け持ち郵便局 移転決定後速やかに
その他 電気・ガス・水道の契約変更手続き 電気・ガス・水道会社 移転後速やかに
電話架設申込(契約済みの電話移設) 電話回線会社
電話架設申込(新規申込)
旧ビルの電話撤去依頼

社内印刷物・住所変更手続き等

内容 備考欄
移転案内発送 遅くとも引っ越し完了の数日前には届くように
銀行口座 移転後速やかに
電話・インターネット回線 新住所が決まったら速やかに準備する
会社概要書(パンフレット)・社用封筒・名刺・社判 新住所が決まったら速やかに準備する
複合機などのリース契約 新住所が決まったら速やかに準備する
事務用品購入サイトなど各種登録サイト 移転後速やかに
ホームページ記載の所在地 移転日に合わせて